いつから一人前?
陶芸とは多くの分野が関係しています。きちんとしたものを作れることはもとより、素材についての研究が必要です。土を知ること、釉薬の勉強、窯焚きについてと大別するとこの三本柱になりますが、これらがすべてが総合的にかみ合ってはじめて作品となります。
つまりどんなに作りが良くても釉薬がまずいと良いものとはいえませんし、釉薬が良くても作りが冴えないとこれもまた残念な結果となります。またこれら二つが良くても窯焚きで台無しにすることもあります。どれ一つかけても条件を満たさないのです。
修行して数年経ちますとなんとなく分かってきたような気になるものです。しかし、いざ独立したりしますと分かっていたように思っていたことがとたんに自信がなくなり、実は何もわかっていなかったことに気付かされます。
私が思うに売り物としてとりあえず恥ずかしくないものとなり、一応一人前とみなせるようになるスタートラインは10年からだと思います。これは良く受ける質問の一つです。もちろん多少の個人差はありますが、どんなに器用な人でも3年や5年ではどうしてもまだ一皮剥けていない感が否めません。
最近、陶芸祭りなどのイベントでろくろ実演が必ずといって良いほど行なわれ、しばしば若手の陶芸家が駆りだされ、実演をしているのを興味半分でお客に混じって見物しますが、見ていて恥ずかしくなります。こんなこと言うと申し訳ないが正直な感想です。いくら見物客は素人とはいえ、申し訳ない気持ちになります。
陶芸とはそれほど奥行きが深く、近道はないのです。あるとすればお金や名声を追い求める貪欲さではなく、謙虚に学び続ける意欲と姿勢なのではないかと信じております。