三度目の正直
写真は窯出し前の窯内のものですが、三種類のタイプにお気づきでしょうか?
二段目に見える両脇の湯飲みが融け不足でガサガサしているのが分かりますか?
明らかにこれでは商品になりません。
勿論温度を上げすぎで釉薬が流れて棚板にくっついてしまうと言うこともあります。(これまでも説明してきましたように)
しかし、今回は明らかに温度が足りなかったパターンです。
そして、興味深いことにこの三タイプはいずれも同じ釉薬なのです。ただいずれも土と濃度が違います。
ガサガサの物は一番濃くなっています。そして、土の耐火度が一番高いでしょう。
というわけで釉薬と言うのは土に反応するものなのです。
また濃度が濃いと地滑り現象で流れてしまうと言うこともあります。(今回は逆でしたが)
しばしば教室の方々が思うように手際よくかけられず、ごてごてになって本人の意思に反して多重掛けになって流れてしまったと言うこと、また釉薬がぼたっと棚板に落ちてしまったと言うことはしばしば見かける様子です。
一、焚き 二、土 三、細工 これは何度も申し上げましたが、上記の点を含め何十年携わっていてもやはり最後のこの工程は難しいものです。
どんなジャンルでもそれぞれの難しさはあるのは間違いありませんが、木彫りや彫刻にしてもまた絵画や彫金にしても自分が納得して手を置くときには完成となります。
しかし、陶芸はどんなに手をかけて納得の行く出来栄えになったとしてもまだ未完成であり、最後の火をくぐらない限り完成品とはならず、しかもこれで台無しになることは珍しくありません。
人為が全く関わらないわけではありませんが、最後はある意味自分の手の届かないところで仕上げられるというもどかしいものです。
それが故に多くの失敗もあり、また予想外に上出来、などということもあり得るのです。
それがこの陶芸の奥の深さであり面白みではあるものの、失敗のたびにこの特殊性を恨みたくなるのは正直な気持ちです。
※焼き足りなければまたの機会に焼けばいいのですが、いかんせん今回は注文のために焼いた窯でしたのでトホホでした。