土ものの削り
2010年1月22日のブログでも取り上げましたが、もっと分かりやすく説明しますね。最初の写真は削る前の造ったままの姿です。
それを段階的に削っていきますが、最初に一定のレベルまで削ります。内寸つまり深さと口径は計ってありますので余分な底の肉を削ります。次に際を落として、最後に高台内を削って終わりです。
これだけです。
腰のところは全く削っておりません。よく見かけるのはこのあと腰のところをさらにザーッと削りまくるシーンです。指摘すると「でもこれをしないと重たいんです」という。
では悪い例と比較してみましょう。左は腰に全くカンナを当てていないもの、右はあえて腰にカンナを当ててみました。
どちらが美しいでしょうか?
写真では分かりにくいかもしれませんが、明らかに水引きのろくろ目が残っている左の方が自然で美しいです。
そして、手作り感があります。ビギナーは手を入れれば入れるほど手作り感が出ると思っていすが、全く逆です。
ろくろで造った感が残るのが一番手作り感があり、仕上がりも柔らかい雰囲気になり、迫力もあり、作りが生き生きしています。
削れば削るほどイメージが硬くなり、面白みのないものになり、死んでしまいます。
下手すると削りまくってそのあと乾燥したら、今度はサンドペーパーを掛けまくるという方も珍しくありません。
これでは手で作る意味がありません。機械ろくろか鋳込みで造るのと違わないのです。
「でもそうしないと重すぎるんです」これもまた事実です。どうしたら解消できるのでしょうか?
一言で言うとろくろが上手になるしかありません。つまり削りまくるのは軽くするための対処療法、とりもなおさずごまかし作業以外のなにものでもありません。
最初の水引き成型を基礎からきちんと覚えることが、根本治療なのです。ろくろを経験されている方ならお分かりかと思いますが、小さな小鉢の様なものや比較的開いた形のものはなら何とかごまかしながら適当に作ったようになるかもしれませんが、高さを出していくことは大きな壁となるでしょう。
回転し、遠心力つまり外に働く力を受けながら横ではなく、上に土を引き上げるのはある意味高度なことです。(勿論重力も掛かりますから均一に伸びてなかったり、薄すぎると自重でへたります)
これは土の可塑性のギリギリに挑戦することを意味します。これは口で言うほど簡単なことではありません。
大抵は半分から上は何とか薄くできても、半分から下つまり腰の部分を薄くできないというのがパターンです。(この文面で大きくうなずいている方も多いのでは)
そしてもっと悪いことに造るパターンが身に付いていないと手際が悪いので時間が掛かり、土はどんどん融けてどろどろになっていきます。そして、水がまわり腰砕け状態になり、手がつけられなくなってしまいます。
これを解消するには手際よく作る必要があり、そうするには造るプロセスをしっかり身に付けることです。毎回やり方がその都度違っていたり、出たとこ勝負で対処するというのでは何十年やっていてもダメでしょう。それでは削りまくって造るというパターンから脱却できません。
ですから急がば回れです。なんでもそうですが、基礎をきちんとマスターして応用編に入ることです。これ以外の近道はありません。(これはしばらくは作ってはつぶすの繰り返しになります)
そして、ちゃんと教えられる(できる)指導者に付くことです。素人の先輩に教えてもらうなどもってのほかです。
わたしは陶芸に携わる多くの人に是非、時間の経過に見合った実力をつけ、本当の目を養い、良いものを作る満足と喜びを味わっていただきたいと願って止みません。
PS:この写真は北海粉引きの珈琲カップです。これから本当に高大の際だけを削って取っ手を付けるわけですが、見ての通り腰にへら目が入っています。
腰を削るならすべて消えてしまうことになります。削りまくる造り方はデザイン性にも影響してくると言うわけです。