楽しみか不安か
「穴窯の窯焚き楽しみですね~」
しばしばそのように声をかけられます。
いつも返答に困ります。
とりあえず「まぁそうですね」と苦笑い。
正直手放しに楽しみといえるほど楽なものではない。
また、成功する保証はどこにもない。
窯の状態、薪の状態、天候、焚き方、その他人為的ミスなどすべての条件が揃って初めて炊き上がるのです。
これをクリアしてもあくまでも無事炊き上がるだけです。
思惑通りのものが完成するかどうかは別問題です。
実際、窯焚き中に窯が崩れたり作品が崩れたりということも珍しくはありません。わたしも経験済みです。
ですから、その昔は神主を呼んで祈祷を捧げる儀式が(今でも国宝の様な由緒のあるところはしているのかもしれませんが)行われていたのもそれだけ多くのリスクが伴うということなのです。
勿論、失敗すれば大損害となります。まさに真剣勝負なのです。
なので楽しみ30<不安70というのが正直な気持ちです。
この心境は出産前に似ているかもしれません。
よく人は「何はともあれ健康で無事に生まれてほしい」といいます。
まさにそんな気持ちです。
まずは無事に生まれてほしい、つまりとにかく何もトラブルもなく焼きあがってほしい。
それがどんな気持ちよりも優先されます。
いちいち「楽しみですね」という言葉に上記の説明はしませんが、それよりは実は不安が大きいのです。
窯焚き前、最中は毎日のように失敗する夢を見ることに深層心理が表れているといえるでしょう。