屯田窯の陶芸家「清水裕幸」公式ブログ

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陶芸の視点で見たスカーレットの時代の有利な点と不利な点

16 2月, 2020 (22:45) | 屯田窯の日常 | By: hiroyuki

ご覧になっている方ならお分かりかと思いますが、時代背景としては

今から約半世紀ほど前の時代背景です。

この時代に陶芸を志す点で不利な点は何でしょうか?

それは情報不足です。

当時は今と違って情報が溢れている時代ではありませんでした。

今なら陶芸に関しても様々な情報を得ることができます。

ヒロインが苦労していた窯焚きもそうです。

もちろん窯焚きなどは活字で見たとおりにやれば成功するというほど甘くはありませんが、

しかし、どんな要領でどのくらい焚けばいいかなどの基本情報は得られます。

昔は窯焚きを含め、釉薬の調合その他の技術は知的財産として門外不出でした。

現在ではその種の情報を含め、いろいろな基本情報が得られます。

ヒロインは窯焚きを繰り返し失敗し、薪代のために多額の借金を余儀なくするという

こととなりました。

ですから当時はとにかく失敗しながら学んでいくのが常識だったと思います。

この点では確かに不利だったと思います。

有利な点を挙げるとするなら、売れた時代であることです。

高度経済成長と共に人々の生活水準はどんどん高くなっていく時代です。

三種の神器と言われた、テレビ、冷蔵庫、洗濯機も普及し、これまでのライフスタイルが

大きく変わりつつある時代でした。

そして、食器なども鑑賞要素も求めるようになり、使えればよいと考えていたものから

変化していきます。

それで、あのあと空前の陶芸ブームが到来します。

私が修行に出たのは今から40年前。

当時、私たちが作らされたものは一年前に受けたものでした。

つまり、注文しても一年待ちというわけです。

修行した窯元は三基の電気窯を毎日ローテーションしていました。

一基は朝窯出ししてすぐ窯詰めする、もう一基は焚きあがって冷ましている、もう一基は焚いている

という具合です。

当時は冠婚葬祭などの引き出物やお返しなども盛んにやり取りされており、

大量注文もしょっちゅうあったものです。

また自宅用に購入する方々も五客セットでというのが常識でした。

湯呑も小鉢もコーヒーカップも五客単位で売れたものです。

セトモノから手作りを求め、それらを使うのがステータスだったのです。

今では冠婚葬祭やお返しなどで使われることはほとんどなく、自宅用で購入する場合も

自分用に一つといった感じです。

その時代の人たちはもはや高齢で世代が変化して価値観も

大きく異なりました。

最近の若い人はモノがあふれている時代に育ってきました。

ですから、物がない時代に育ち、調度品を求めた世代とは価値観が全く違います。

今の若い世代は食器などにはこだわりません。

100円ショップでもニトリでも使えれば十分なのです。

生きてきた背景が違うのでこればかりはしょうがないことなのです。

またそのいい時代にブームに乗って陶芸家が爆発的に増え、それもまた自分の首を絞める

ことに一役買ってしまいました。

今では産地の窯元がどんどん廃業するまでになってしまいました。

こうしたことを考えると、あの時代背景は陶芸家として生計を立てる点では大変有利だった

と言えます。

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